【コレクション】1867年 ヴィクトリア女王 フローリン銀貨



発行年・王朝 1867年ヴィクトリア女王
種類(エッジ) フローリン銀貨(ミルド)
グレード NGC MS63
希少度ランク R2(非常に希少)
入手方法 裸を海外ディーラーから購入

ゴチックフローリンでは入手が難しい特年

 フローリンとは、ヴィクトリア女王時代に新しく導入された2シリングに相当する通貨単位である。1848年にデザインを決めるためのパターンが、表面3種、裏面9種の合計27種が作られて、通貨名が「フローリン」に決定した経緯がある。27種のパターンが作られた段階では、通貨名の候補としては、フローリンの他に「センタム」、「ダイム」、「ディケイド」の合計4つあった。

 ところが、決定された表面のデザインには、イギリスのコインには刻印されることが慣例となっていた「DEI GRATIA(神の恩寵による)」という文字列が抜けていたため、1849年に流通貨としてデビューした新フローリン銀貨は国民の反発をかってしまい、発行は1849年銘だけに留まりデザインの修正を余儀なくされた。

 1849年銘の、いわゆる「ゴッドレスフローリン」銀貨に代わって、1851年から発行されたのが「ゴチックフローリン」銀貨である。1847年銘ゴチッククラウン銀貨同様に、銘文にブラックレター(ゴチック文字)が使用されているため、コレクターの間では、「ゴチックフローリン」という愛称が定着している。ゴチックフローリン銀貨の製造は1851年から1887年まで続いたが、1851年はプルーフ貨のみの発行、1882年は欠番(発行なし)となっている。

 ゴチックフローリン銀貨は流通貨なので、その発行枚数は1枚単位で正確に記録が残っている。しかしながら、ESCに記載されている希少度ランクと発行枚数は必ずしも連動していない。手変わりやバラエティーと除くと、ESCでR2(非常に希少)以上にランクされているのは、4年号(1854年のR3、1862年のR2、1863年のR3、1867年のR2)だけである。一方、ESC巻末の発行枚数データによると、発行枚数が少ないトップ5は、1869年(約29万7000枚)、1867年(約42万4000枚)、1854年(約55万枚)、1876年(約58万枚)、1886年(約59万2000枚)となっている。

 ゴチックフローリン銀貨の中で一番発行枚数が少ない1869年銘の希少度ランクは、なぜか「S」に留まっている。逆に、「R3」にランクされている1863年は約93万9000枚発行されている。R3とランクされている1854年銘、1863年銘の鑑定数はNGCではそれぞれ4枚のみと確かに希少性は高いようであるが、1863年銘のゴチックフローリン銀貨がどうしてそれほど稀少になったのか、明確な理由はわからない。

 ゴチックフローリン銀貨の流通貨は、裸なら状態がよさそうなものでも10万円からせいぜい20万円という価格帯なので、投資には向いていないように見えるかもしれない。長年、低価格帯で放置されていたため、鑑定料まで払って鑑定を受けようと考えるコレクターが少なかったため、裸のまま状態が劣化した個体が多いと思われる。近年、価格がやや上昇してきたこともあり、鑑定に出される個体も徐々に増えてきているが、Detailsと評価される割合が比較的高いと言われている。今なら「R」以上の特年で、かつMSのグレードのものは鑑定数が少ない割りに低価格で集めることができる。

 ゴチックフローリン銀貨は、重さ11.31g、直径は30mmとやや小型の銀貨である。ヴィクトリア女王時代のクラウン銀貨(重さ28.28g、直径38.6mm)と比べるとかなり小さい。忘れてはいけないのは、今後、鑑定済コインの割合がますます高くなっていくという点。クラウン銀貨もフローリン銀貨も、スラブのサイズはまったく同じで、特にNGCの場合、スラブ自体に結構な重さがあるので、スラブに入ったクラウン銀貨とフローリン銀貨では、あまり重さの差は感じない。一番目立つ違いは表面積であるが、フローリン銀貨の表面積は、クラウン銀貨の約60%もある。コインの価値と表面積は連動するわけではないが、今後、大型銀貨と小型銀貨の価格差は縮小するのはないかと予想している。

 ゴチックフローリン銀貨の状態のいい裸コインを安く購入して鑑定に出す、という手法は、鑑定結果を予想するスキルが身に着くうえ、狙い通りMS以上の数字がつけば投資妙味も高い。今のうちにMSの鑑定が付いたゴチックフローリン銀貨を集めて寝かせておけば、将来、大化けする可能性も十分にある。10万円、20万円の素材だからとはいえ、決して馬鹿にはできない。今でこそPF60以上のゴチッククラウン銀貨は200万円以上で取引されているが、20年ほど前なら状態のいい裸コインが20万円から30万円程度で入手出来ていたのである。

 そのような計画に沿って、私は海外で状態のいいゴチックフローリン銀貨を30枚ほど厳選して、順次、NGCに鑑定に出していった。この1867年銘ゴチックフローリン銀貨はそのうちの1枚である。1867年は希少度ランクがR2だけあって、販売しているディーラーを見つけるのに苦労した。鑑定に出したところ、期待通りMS63が付いた。1867年銘ゴチックフローリン銀貨の鑑定数は、合計12枚(NGCが8枚、PCGSが4枚)、どちらもMS64がファイネストで、MS63はセカンドファイネストなので、鑑定結果には満足している。

 日本の円銀も中国人投資家が買い漁っている影響で、最近は価格が大きく上昇している。並年であってもMS63以上になると、なかなか入手できなくなった。円銀の鑑定数はゴチックフローリン銀貨よりはるかに多いので、ゴチックフローリン銀貨の高鑑定品は、サイズが小型という点を差し引いても、投資対象としては有望だろう。

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