【コレクション】1876年 ヴィクトリア女王 フローリン銀貨



発行年・王朝 1876年ヴィクトリア女王
種類(エッジ) フローリン銀貨(ミルド)
グレード NGC MS63
希少度ランク S(珍しい)
入手方法 裸を海外ディーラーから購入

希少度ランクの割りに鑑定数が極端に少ない年号

 切手やコインの業界では、カタログと呼ばれる冊子には参考価格が記載されているものが多い。たとえば、切手のカタログとして有名なスコットは世界各国の切手を網羅しており、掲載されている参考価格が切手商の販売価格に影響している。カタログの参考価格は実勢価格よりかなり高めで、切手誌などの広告では「スコットの60%で販売」などと宣伝に使われることも多い。

 イギリスコインのカタログとしては、オークションハウスでもあるスピンクが発行しているカタログ(銀貨なら「English Silver Coinage(ESC)」、金貨なら「English Gold Coinage(EGC)」など)が有名である。私は銀貨が専門なので、コインの調査を行うためにESCは欠かせない。このESCには、「価格」は一切掲載されていないが、その代わり、すべてのコインに「希少度ランク」が付けられている。

 希少度ランクとは、希少度を「最もありふれている」を示すC3から、「現存数1枚もしくは2枚」を示すR7までの記号で示したもの。希少度は、C→N→S→Rという順に高くなっていく。CはCommon(ありふれた)、NはNormal(普通)、SはScarce(珍しい)、RはRare(稀な)という英語の頭文字である。コレクターの間では、R以上のランクが付けられたコインをレアコインと表現することが多い。

 希少度ランクは、ベテランのコインコレクターであるカタログの編者が、発行数やポピュレーションレポートの鑑定数、オークションでの登場頻度などを参考に独自に付けたものである。ESCの歴史は古く、その前身となるカタログが発行されたのは1649年。当然、今に至るまで何度も編者は交代している。どの版から希少度ランクが掲載されるようになったのかは知らないが、編者交代の度に、すべてのコインの希少度ランクが妥当かどうかを検証するのはとうてい無理と思われるので、大半は前の版から引き継いだ希少度ランクをそのまま掲載しているのではないかと想像する。(1853年プルーフハーフクラウン銀貨のページで紹介したように、希少度ランクの変更はそれなりにある。)

 中には、1825年プルーフハーフクラウン銀貨(ミルド)のように、現時点での鑑定数がNGCとPCGS合わせても10枚しかないのに、なぜか希少度ランクは「S」と評価されているものもある。ディーラーやコレクターは、売買する価格を判断する際に、どうしてもESCの希少度ランクを参考にしてしまうため、「S」としか評価されていないコインの価格は伸び悩む。希少度ランクが過小評価されていて、現在、安値で入手できるものは有望な投資機会とも言える。

 私は、1851年から1887年まで発行が続いたゴチックフローリン銀貨の中で、優先的に投資するものを決めるため、発行数、鑑定数、ディーラーでの在庫状況などを調査したところ、この1876年フローリン銀貨が非常に有望だと判断し、状態のいい裸コインを購入した。鑑定に出したところ、期待通りMS63が付いて戻ってきた。1876年ゴチックフローリン銀貨の鑑定数は、私のコインを含めてもわずか9枚(NGCが6枚、PCGSが3枚)。MS63より上位のグレードは、NGCとPCGSにMS64がそれぞれ1枚あるのみだ。かなり貴重なセカンドファイネストと言えるだろう。

 1876年の希少度ランクは「S」と評価されている。(だからこそ、狙い目だと判断したのだが)発行数は約58万枚で、ゴチックフローリン銀貨では1869年(約29万7000枚)、1867年(約42万4000枚)、1854年(約55万枚)に次いで4番目に少ない。鑑定数と発行数を見る限り、明らかに「S」は過小評価だと思う。「R2」と評価されてる1867年の鑑定数は12枚(NGCが8枚、PCGSが4枚)。普通に考えても、「R」以上の実力は十分にありそうだ。

 1876年ゴチックフローリン銀貨は、安く買えるうちにあと何枚か入手したいと思っているが、状態のいいものはなかなか見つからない。今でさえ探すのに苦労するのだから、10年、20年も経過すれば、かなりのレアコインとして注目されているのではないだろうか。

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