eBayでレアコインを購入することは可能か

世界最大級のネットオークション

 eBayとは、アメリカに本社を置く世界最大規模のECサイトである。当初は個人が気軽に出品できるフリマ型のオークションサイトとしてスタートしたが、今では業者がストア形式で販売するマーケットプレイスの比重も高くなってきている。以前はアメリカでもヤフーがオークションサイトを運営していたが、eBayとの競争に完敗して、2007年にアメリカのヤフーがオークションサイト運営から撤退したという経緯がある。

 eBayの最大の魅力は参加者数が多いこと。現在は190ヶ国でサービスを提供していて、世界のアクティブユーザ数は2億人弱に達している。オークションの出品も含めた販売商品数は常時16億アイテムに達するという。フリマ型のオークションサイトとしても世界最大級の規模と表現してもいいだろう。

 eBayは「買い手」の保護が手厚いことで知られる。安心して買い物ができるサイトというコンセプトで運営されているので、購入後も買い手側に何か不満な点があれば、返金が認められるなど、買い手が有利な形で解決されるケースが多い。

 買い手側にリスクが少ないということから、eBayで購入して日本に輸入し、それをヤフオクなどに出品して転売するという副業を実践する人も多い。その商材の一つとしてアンティークコインにも人気があり、コロナ禍の前からeBayで仕入れてヤフオクで販売することに特化したアンティークコイン転売のスクールが開講されており、業界の中でも何かと話題になっている。

 アンティークコインに関しては、eBayにストア出店しているディーラーも多く、検索して珍しいコインがヒットしたかと思うと、結構有名なディーラーが出品していたというケースも多い。最近では、自社サイトではコインを直接販売せず、eBay内のストアのみで販売するディーラーも増えている。おそらく、eBay本部の働き掛けで、eBay内ストアに全面移行すると何らかの優遇措置が提供されているのだろうと思われる。

 アンティークコインを海外のコレクターに販売する際、海外輸送や通関手続きでトラブルになるケースも少なくないようで、eBayが提供するeBay’s Global Shipping Programを採用するディーラーが増えている。これは、クーリエ料金に加え、通関手数料や輸入消費税をeBayに前払いするシステムで、輸送から通関手続き、消費税など税金の支払いなどをすべてeBayが一貫して代行してくれる。

 日本のコレクターがeBayの出店ディーラーからこのプログラムを利用してアンティークコインを購入すれば、eBayにクレジットカードで商品代金、送料、通関にかかわる諸経費(輸入消費税含む)をまとめて払えば、後は自宅に宅配便でコインが届くの待てばいいだけ。便利な一方、販売価格に対して容積や重さが小さいコインのような商品の場合、送料が割高に算出されるので、日本からの利用者にとっては一長一短かもしれない。

掘り出し物が見つかることも

 eBayでもアンティークコインは大量に出品されていて、中にはビックリするようなレアコインも含まれている。ただし、eBay経由で販売した場合は、10%前後の手数料が徴収されるので、ディーラーが出品しているケースでも、手数料分が上乗せされて出品されていることが多い。また、個人のコレクターが出品する場合でも、相手から値引き交渉されることを前提に高めの価格を付けている人が多い印象だ。

 eBayでは、出品者が任意で「Make Offer」ボタンを設置して、購入希望者から「いくらなら買うよ」と値引き交渉ができるようになっている。Make Offerボタンが設置されていない場合でも、メッセージで値引きを打診するということはよくある。Make Offerから「いくらなら買うよ」と価格を提示した場合、出品者がそれを承諾すると、その瞬間、売買契約が成立したことになるので注意が必要だ。

 日本でもeBayで仕入れてヤフオクで販売するというアンティークコイン転売を実践する人が多いように、eBayでアンティークコインを転売して小遣い稼ぎをしようとしている人はかなりいる。残念ながら、そういう転売ヤーは投資に適したレアコインはほとんど扱っていない。

 やはり可能性が一番高いのは、相手がディーラーの場合だ。相手がディーラーだと、価格交渉など話は早いが、どうしても価格は「相場なり」になってしまう。だが、狙っていたレアコインを相場なりに購入できるのだから、大成功と言ってもいい。私の経験から、掘り出し物が有利な価格で購入できるチャンスは、「それなりに有名なコレクターが直接売りに出すパターン」か、「コインが専門じゃない骨董品業者が客から持ち込まれたレアコインを売りに出すパターン」である。

 eBayは買い手の保護に手厚いと書いたが、裸コインを購入する際には注意が必要だ。裸コインが手元に届いた時点で偽物と判別できれば、代金の全額返金で簡単に決着できるが、NGCやPCGSに鑑定に出して偽物だと判明した場合は、クレームを出せる有効期限が過ぎてしまう。いわば「時効」が成立してしまい、eBayを通しての返金要求ができない。出品者がディーラーなら交渉の可能性はあるとは思うが、いずれにしてもハードなやりとりが必要になる。

 また、eBayでは詐欺も多発している。ヤフオクでは、落札者が商品を受け取って、中身を確認して「受取連絡」しないと代金が出品者に支払われない仕組みだが、eBayの場合、出品者が商品を発送した証拠として郵便やクーリエのトラッキング番号をサイトに登録すれば、早ければそれから2日程度で代金が出品者に支払われる。落札者が海外だった場合、荷物が届いて中身を確認する前に支払った代金は出品者の手に渡ってしまうことになる。

 この仕組みを悪用した詐欺と思われるオファーに何度も遭遇したことがある。この種の詐欺は、eBayが保障してくれるので、金銭的な被害は免れる可能性が高いが、届いた商品が偽物などのゴミであることをeBayに証明しないといけないので、その手間にかかる時間を損失とカウントすれば、結構大きな被害と言えるかもしれない。買い手が安心して購入できるeBayであっても、落とし穴や危険は潜んでいるので注意が必要だ。

eBayで掘り出し物を見つけるコツ

 eBayには膨大な数のアンティークコインが出品されているので、掘り出し物を見つけたいなら、基本的にはキーワードで検索をかけることになる。コインの種類などの一般名詞で検索すると、かなりの数がヒットしてしまうので、キーワードを組み合わせるなどの工夫が必要だ。個人のコレクターが出品している場合、コインの名称や綴りを間違っていることもあり、平凡なキーワードだと検索にかからないこともあるので、そのあたりは想像力を働かせないといけない。

 検索結果からアンティークコインを探していると、同じIDの出品者をよく目にするようになる。IDをクリックすれば、その出品者がディーラーなのか、コレクターなのかがわかる。ディーラーの場合は、eBayにストアを開設していることが多いので、そのストアをフォローするなど、リストアップしておくといい。出品者をフォローすれば、その出品者が新たに商品を出品した場合は連絡を受け取れるようになる。

 探しているコインについては、検索結果を保存しておけば、その検索条件に合致したコインが出品されるとアラートを受け取るような設定も可能だ。しかし、出品者をフォローするにしても、検索結果を保存するにしても、すべての新着情報を受け取る設定にしてしまうと、膨大なアラートが五月雨的に押し寄せてしまう。

 そこで私は、ネット上で仮想PCを常時稼働できるVPSを借りて、eBayを定期的に巡回して条件に合致するコインが見つかれば、1時間ごとにまとめてメールで通知してくれるクローラーを運用している。このようなクローラーの機能はシンプルではあるが、検索キーワードを組み合わせて、さらに現在の価格を高い順(降順)に並び換えて、上位から100件だけの情報を収集する設定にしている。

 出品されるコインの中には、摩耗してとうてい投資は向いていないような数百円のものも含まれており、それらの情報をすべて拾っていたのでは、たとえメールでまとめて送ったとしても、内容をチェックするのに膨大な時間がかかってしまうからだ。なお、eBayでは商品の検索自体はログインしなくても行えるため、このようなクローラー運用によってeBayアカウントが何らかの制限を受ける心配はない。

 このクローラーを運用して2年以上が経過するが、eBayから購入できたのは合計3回ほど。私の場合は、投資対象にしているコインのジャンルが狭いということもあるが、たとえ数回ではあっても、クローラーを運用する価値は十分にあったと思っている。

 ヤフオクと同様に、eBayでもオークションと即決(Buy It Now)の二つの形式がある。即決の場合は、Make Offerボタンを経由して価格交渉ができるが、オークション形式の場合、落札できないと購入する権利は得られない。ヤフオクとの最大の違いは、終了時間の自動延長がないことだ。eBayでは、出品者が出品時に決めた時刻ピッタリにオークションは終了し、その時点で最高値を入れていた人が権利を得る。

 自動延長がないため、ライバルに手の内を見せないよう、締切時刻ギリギリに入札する人が多い。最後の一瞬で勝敗が決まるといった感じで、ヤフオクよりもギャンブル感が強い。結局、この値まで出せるという上限で入札するしかないが、やり直しをする時間がないので、せっかく見つけた掘り出し物であっても、落札できなかったケースも少なくない。コイン専門のオークションであろうが、eBayであろうが、やはりレアコイン争奪の競争は熾烈なのだ。

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