アンティークコイン投資はリスクが低いというのは本当か

アンティークコイン投資のリスクは山ほどある

 アンティークコイン投資も「投資」である以上、様々なリスクが存在する。たとえば、偽物を掴まされるリスク、詐欺に会うリスク、高値掴みするリスクなどがあげられる。他の投資と同様、「基礎知識の足りない初心者は儲けられない」のは当たり前。一番危険なのは、知識が不十分のままに参入すること。どのようなリスクが存在するかをしっかりと学習したうえで、リスク以上のメリットがあると確信できた人だけが参入するべきである。

 あるディーラーは、アンティークコイン投資はローリスク、むしろリスクはほとんどない、と宣伝している。顧客獲得のためとはいえ、ちょっと言い過ぎではないかと思ったが、よく聞いてみると「値上がり確実と思われるコインを購入してしまえば、後はコインを愛でながら長期で保有するだけ」だから、ローリスクでストレスフリーと説明しているようだ。なるほど、そのような有望なコインをいったん手に入手したら、後は値上がりするのを待つだけなのでローリスクという表現もあながち間違いではないかもしれない。

 要するに、アンティークコイン投資には様々なリスクが存在するが、そのリスクの大半は「正しいコインを適正価格で買う」までに発生するということだ。「正しいコイン」という表現は今後も頻繁に出てくるが、「自信を持って投資すると決めたコイン」だと思っていただきたい。投資家が100人いれば、「正しいコイン」の定義も100種類ある。全員がこぞってイメージする特定のコインを指しているわけではない。(AKK)

 アンティークコイン投資は、「正しいコインを適正価格で買う」ことができれば、ほぼ成功したのと同じ。そこに至るまでには数多くの落とし穴や罠が待ち構えている。リスクを回避するためには、アンティークコインに関する基礎知識や情報を収集して、自分で研究・分析を行うしかない。その努力を継続した人だけが、アンティークコイン投資をローリスクでストレスフリーと感じられるようになるだろう。

損するリスクは回避できる(かもしれない)

 投資において、最も一般的なリスクとは「損すること」、すなわち購入したコインが購入値以下でしか売れないことだろう。正しいコインを一定期間以上保有すれば、そういう状況になる可能性は低いと思われるが、相場より高く買ってしまうと想像以上に長期戦になってしまう。このようなリスクは比較的簡単に回避できるかもしれない。要は、値上がりするまで持ち続ければいいだけのこと。損してまで売る必要はないのだから。

 アンティークコインは株式のように毎日、きっちり時価が決まるものではないから、現時点で含み益なのか含み損なのかは判断のしようがない。将来、売りに出した時に売れた価格が本当の時価なのである。

 先ほど、「正しいコインを適正価格で買う」ことが重要と書いたが、「正しいコイン」であれば、「適正価格」である重要性はそれほど高くかもしれない。あるディーラーは、「投資に向いたコインを選ぶことがすべて。価格は二の次」と言い切っている。「ウチが売ってるコインは将来性があるので、相場より多少高いけど気にすんなよ」と言い訳しているようにも聞こえるが、私はこの言葉が結構好きだ。アンティークコイン投資の本質を突いていると思う。

 希少性の高いコインを「適正価格で買う」ことは簡単ではない。「正しいコイン」であるなら、仮に相場の2倍の価格で買ってしまっても、絶望することはない。今後インフレが加速して、そのコインの価格も15年間で2倍になると仮定する(インフレ率が年5%なら15年で約2倍になる計算)なら、15年間余分に保有すればいいだけのこと。(簡単に15年間とか言うなよ、と突っ込みの声が聞こえてきそうだが)

 まあ、2倍は冗談にしても、相場と呼ばれる適正価格の2割増しくらいで買えるのであれば、ヨシとすべきケースも多い。アンテークコイン投資において、最も悔やむべき失敗は、以前から狙っていたコインがやっと売りに出た時、それを買う資金がないことだ。何を買うか、つまり「正しいコイン」が何かを決めることはもちろんであるが、それ以外の「買わないコイン」を決めることも同じくらい重要なことだ。

 私は、アンティークコイン投資で損することは心配していない、というか想定していない。正しいコインを選べば、15年後には十分な成果が出ていると楽観している。私が唯一危惧するのは、その期間、貴金属相場、特にゴールドの価格が急騰して、アンティークコインよりもメイプルリーフ金貨などの地金型金貨の方が投資パフォーマンスがよくなってしまうことだ。だって、地金型金貨メインの投資家に、「小難しいアンティークコインなんかより、素直に地金型金貨買うのが正解だったよね」なんてマウント取られるのは癪だから。(AKK)

アンティークコインに「適正価格」はあるのか

 すでに何度も「適正価格」という言葉を使ってきた。この「適正価格」とは、相場、市場価格、実勢価格、時価などの言葉とほとんど同じ意味と思っていただきたい。しかし、こう思う人も多いのではないだろうか。アンティークコインに「適正価格」などあるのか、と。骨董品や美術品に、市場参加者全員が認識している定価がないように、実はアンティークコインにも適正価格はあってないようなものだ。

 わかりやすく例えると、同じ種類で同じグレードのコインが場所によっては120万円で売られていたり、150万円で売られていたりする。買う側から見ても、オークションで運よく100万円で買えた人がいる一方で、ディーラーの言い値150万円を支払った人がいるかもしれない。このコインの適正価格はいくらなのか?それほどアンティークコインの適正価格はあいまいなもので、本来はある程度の幅を持たせて「適正価格帯」と表現した方が実態に即しているのかもしれない。

 アンティークコインの最も現実的な「適正価格」は、毎週のように世界各地で開催されているオークションの落札価格だろう。オークション落札価格は、各オークションハウスがインターネットで公開しているほか、世界中のオークションの落札価格を検索できるデータベースを提供しているサイトもいくつかある。アンティークコインのディーラーやコレクターは、これらのオークション履歴を参照して売買しているので、事実上の相場として機能している。

 オークションを仕入れの場として活用しているディーラーは多い。コインオークションでは、落札価格(ハンマープライス)にバイヤープレミアムと呼ばれる約20%の手数料が加算される。海外のオークションであれば、日本に輸入する時に10%の消費税も徴収される。それでもディーラーが積極的にオークションでコインを仕入れるということは、購入原価に自分たちのマージンを上乗せしても、コレクターに十分販売できると判断している証拠だ。

 狙ったコインを想定した予算内で落札することができれば、「正しいコインを適正価格で買う」という条件を一気にクリアできそうだ。では、オークションでコインを落札するのが、アンティークコイン投資で成功する一番の近道なのか?残念なことに、現実はそれほど単純なものではない。

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