ディーラーが発信しているYouTube動画を活用しよう

国内ディーラーとの関係を深めていきたい

 私はアンティークコインを「どこから買うか」には、まったくこだわりがない。探している「正しいコイン」を許容できる価格で売ってくれるなら、オークションであろうが、ディーラーであろうが、どこからでも喜んで購入する。eBayなどの個人売買プラットフォームを通して、コレクターから直接購入することにも抵抗はない。eBayでは何度か購入したことがあるが、実際の売り手はディーラーのケースが多かった。

 マイコレクションを見てもらうとわかると思うが、実はこれまで国内ディーラーから購入した経験はない。別に国内ディーラーを毛嫌いしているわけではなく、これまで機会がなかったからだ。「正しいコイン」が売られていることも何度かあったが、残念ながら価格が許容範囲の上限をはるかに超えていた。懐に飛び込んで粘り強く交渉すれば、許容範囲まで下げてもらえたケースもあったかもしれないが、それを行う気にならないほど乖離があった。

 これは想像であるが、国内ディーラーは本当のレアコインは表に出さずに常連客に個別に紹介しているケースが多いのではないかと思う。私のような一見さんがウェブサイトを巡回しても、そこのは掲載されていないのだろう。レアコインをいくらで販売しているかという情報をインターネットで公開するのは、ライバルのディーラーにマージン率を明かしているようなものなので、そのあたりをクローズドにしたい気持ちはよく理解できる。

 ディーラーからいいコインを紹介してもらおうとなると、少なくともそのディーラーの顧客にならないといけない。顧客とは、購入実績のある客のこと。私に資金的な余裕があれば、ディーラーとの関係を深めるために投資用じゃないコインを購入して顧客になるという手もあるが、正直、それを複数のディーラーに対して行おうとすると、かなりの先行投資が必要になる。ここでも資金力のある投資家やコレクターが絶対有利な状況だ。

 このままでは国内ディーラーといい関係が築けないので、厳選した少数のディーラーから、とりあえず「正しいコイン」に近いコインを購入してみようかとも検討中である。ディーラーの顧客になる一番の目的は、将来、表に出てこないようなレアコインを優先的に紹介してもらうこと。もちろん、そのレアコインが私の「正しいコイン」の条件に合致しない場合は購入できないのだが。

 どのディーラーと付き合うのがいいのか、それを判断する際に貴重な情報源となるのがYouTube動画だ。ディーラーの中には自分の専門知識をアピールするために、質の高いコンテンツを発信している人が少なくない。そういった動画を拝見して、内容に感服したらコメントを残している。直接質問したい場合は、メールで質問することもある。発信された動画の内容に関する質問なので、比較的気軽にコミュニケーションができるのが大きなメリットだ。

「世界コイン」の動画コンテンツに感動

 ディーラーが発信しているYouTube動画は、基本的には集客活動の一環なので、特定のコインの魅力を説明したり、それらのコインが最近値上がりしていることを強調したりするのは仕方ない。新入荷したコインを宣伝するのは、ある意味、YouTubeの活用方法としてはオーソドックスな手法ともいえる。

 最近増えているのは、海外オークションの事前レビューと落札結果を報告する動画。従来は、海外オークションの落札情報は、自分たちの仕入れ値水準を明かしてしまうことになるので、あまり触れたくないと考えるディーラーも多かったと思う。そういった、コレクターや投資家が気になっている情報をオープンにする姿勢にはとても好感が持てる。まあ、投資家ならオークションハウスの公式サイトでこまめにチェックしている人は多いだろうけど。

 つい先日、いつも通りYouTubeでアンティークコイン関連のコンテンツを巡回していたところ、クオリティの高さに感動する動画を見つけた。世界コインが公開した「NGCによる貿易銀のPF評価の基準について」と題した動画だ。MS64と鑑定された明治8年銘の貿易銀が、実はプルーフではないかというコレクターからの質問に対して、鑑定会社NGCの社長、副社長、鑑定部門の責任者などとオンライン会議した内容のダイジェストとなっている。

【NGCによる貿易銀のPF評価の基準について】(世界コイン)
https://www.youtube.com/watch?v=gWAD4hirZU0

 私も、過去に鑑定されたコインの中に、PF(プルーフ)とMSが混同されているケースが相当数あるのではないかと感じていた。最近に区分として追加されたPL(プルーフライク)を含めて、どのような基準でPFとMSのPLが区別されているのか、とても気になっていた。この動画で、NGCの鑑定基準を決める権限のある幹部から、PFと鑑定する際の条件が明らかにされた。

 動画によると、NGCでは、「造幣局に残された公式記録」と、「コインが少なくとも2回以上打刻されているかどうか」をPFと認定する条件にしている。プルーフ仕上げのものは、仕上げのために複数回打刻するのが通常のため、精密に測定できる機器を使ってコインの打刻された回数をチェックしているという。

 今回、問題提起のきっかけとなったMS64と鑑定された明治8年銘の貿易銀については、複数回打刻された形跡が見られなかったので、MSという鑑定が覆られることはなかった。結果としては残念だったが、NGCが厳格な基準をもってプルーフを鑑定していることがわかり、非常に有益な情報となった。

 個人的には、その厳格な基準がいつから適用されているのか、NGCの公式サイトではPLの基準としてフィールドの反射率をあげているが、PLの具体的な基準はどうなっているのかなどについても知りたいと思った。過去にPFと判定されたコインの中には、比較的最近になって追加されたPLと区別がつかないものも少なくない。PLという区分がなかった時代にも、PFと判定するのに、その厳格な基準が適用されていたのかどうか、そのあたりに非常に興味がある。

 マイコレクションの1853年プルーフゴチックフローリン銀貨のページにも書いたが、昔はPFの判定基準が今より緩かったのではないか、という疑問を持っている。だからといって、昔にPFと鑑定されたコインを、今の基準で再鑑定するのは不可能だとは思うが。

 このような貴重なオンライン会議のダイジェストを惜しげもなくYouTubeで公開された世界コインには敬意を表したい。世界コインは、王社長がライブ配信で視聴者からの質問に真剣に回答するなど、コレクターや投資家に寄り添ったコンテンツの配信を行っている。今後も、世界コインの発信するコンテンツには注目していきたい。(文中において、商号の敬称は省略させていただいた。)

「目指せ!投資初段」もYouTubeチャンネルを開設

 YouTubeでアンティークコイン関連のコンテンツが増えることは、業界全体が盛り上がるためにも非常に好ましいことである。YouTubeで動画を発信しているのは、やはりディーラーが多く、コレクターや投資家と思われる個人が発信している動画は、まだまだ少ない。そこで、「目指せ!投資初段」もYouTubeチャンネルを開設することにした。

 もちろん、このブログは継続して運営していくが、並行してアンティークコイン投資に関する「雑談」を定期的に公開していく予定。動画は1回10分から15分程度で、毎回、一つのテーマについて緩く雑談を行う。アマチュアである私には直接的なメリットは何もないが、業界を盛り上げるために、投資家、コレクターの立場からこれまでに体験したことや日頃、考えていることを気ままに配信していきたい。

 簡単なレジュメが書かれたスライドを作り、画面と音声をそのまま記録できるソフトを使って録画したもので、とにかくコストを手間を最小限に抑えたローテクな手作り動画になっている。しばらく試験的に配信してみて、音声だけのポッドキャストのようなコンテンツの追加も検討してみたい。

 いずれにしても、空いた時間で適当に作っているだけなので、ディーラーがコストをかけて編集している動画と比べるとかなり見劣りしてしまうが、その点はご了承いただきたい。なお、「雑談」動画の定期公開は10月末頃に開始する予定である。

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