経営ナレッジの資産化とは

「経営ナレッジの資産化」とは、経営者やベテラン社員の頭の中にある「経験と勘」を言葉にし、会社の財産として次の世代に継げる形にしていく取り組みです。

会社で最も価値のある財産は、帳簿には載っていません

どんな会社にも、財務諸表には現れない財産があります。

「この取引先にはこう対応すればうまくいく」「この工程でトラブルが起きたら、まずここを確認する」「クレームが来たとき、最初の一言で空気が変わる」。

こうした判断基準や対応の勘どころは、何十年もの実務経験の中で培われたものです。教科書には書かれていませんし、マニュアルにまとめようとしても、なかなか言葉になりません。

このような「言葉にしにくい知識」を、暗黙知と呼びます。

暗黙知は、会社の競争力そのものです。同業他社が簡単には真似できない、御社だけの強みの源泉です。しかし、それが特定の人の頭の中にしかない限り、その人がいなくなれば会社から消えてしまいます。

なぜ、これまでナレッジ化できなかったのか

暗黙知が大切なことは、多くの経営者が直感的にわかっています。だからこそマニュアルを作り、引き継ぎ資料を整備し、OJTで「見て覚えろ」と伝えてきました。

しかし、それではうまくいかなかった。

理由は明確です。暗黙知の本質は、手順や作業の流れではなく、「なぜそう判断するのか」という思考のプロセスにあるからです。手順書には「こうしなさい」と書けますが、「なぜこうするのか」「どんな状況ならこうしないのか」までは書ききれません。

ベテランの頭の中にある判断基準は、本人にとってはあまりにも自然で、わざわざ言葉にしようとも思わないものです。聞かれても「長年の経験としか言いようがない」となりがちです。

この壁を超える手段が、ようやく現実のものになりました。AIとの対話です。

AIが「聞き上手な相棒」になる

AIは、ベテランの知識を根こそぎ吸い出す機械ではありません。

AIが得意なのは、「問いかけ」です。「それは具体的にどういう場面ですか?」「別のケースではどう判断しますか?」「その判断の背景にある考え方は何ですか?」と、的確な質問を重ねることで、本人も気づいていなかった暗黙知を自然に言葉にしていきます。

人間の聞き手と違い、AIは何度でも同じ質問ができます。忙しいベテランの手を止めることもありません。相手のペースに合わせて、じっくりと対話を続けることができます。

ただし、ここで大切なことがあります。

2022年にChatGPTが話題になった頃のAIは、一回ごとの会話を「使い切り」にする対話ツールでした。どれだけ深い話をしても、次の会話ではすべて忘れてしまう。これでは、暗黙知を蓄積して会社の財産にすることはできませんでした。

状況が変わったのは、ごく最近のことです。AIが過去の対話を記憶し、教えた知識を土台にしてさらに学び、成長していく。いわば「育つAI」とも呼べる技術が実用化されたのは、ようやくこの1年ほどのことです。

つまり、「経営ナレッジの資産化」は、最新の技術によってようやく実現可能になった取り組みです。AIの活用で出遅れたと感じている方も、心配はいりません。この手法に関しては、まだ誰もがスタートラインに立ったばかりです。今このタイミングで「経営ナレッジの資産化」に関心を持たれたあなたは、むしろ先駆者になれる立場にいます。

こうして引き出された知見を蓄積し、育てていく場所が、「第二の脳」です。

「第二の脳」を育てる5つのマイルストーン

「経営ナレッジの資産化」は、一気に完成するものではありません。段階を踏んで、少しずつ「第二の脳」を育てていきます。

M1

暗黙知の言語化

経営者やベテラン社員の頭の中にある判断基準を、AIとの対話で言葉にしていく最初の一歩です。

M2

第二の脳の誕生

言語化した知見を一か所に蓄積し、いつでも検索・参照できる状態を作ります。会社専用の知識の器が生まれます。

M3

集合知脳

個人の知見が組織全体で共有され、若手社員もベテランの知見を引き出しながら仕事ができるようになります。

M4

24時間稼働の頼れる先輩

蓄積されたナレッジをもとに、AIが新人からの質問にいつでも答えられるようになります。何度聞いても誰の手も止まりません。

M5

構想の自律化

第二の脳が成熟し、新しい提案や改善策をAI自身が発想するようになります。社員のデジタル対応力も自然と底上げされていきます。

最初から完璧を目指す必要はありません。M1の「言葉にする」から始めれば、その先の道筋は自然と見えてきます。

もっとくわしく

「経営ナレッジの資産化」が解決する経営課題や、「第二の脳」が育つことで会社がどう変わるのかを、それぞれのページでご紹介しています。