インターネットがコイン投資に大きく貢献
1990年代半ばにインターネットが登場したことで、庶民の生活も一気に便利になり、株式などの投資環境も劇的によくなった。当然のことながら、アンティークコイン投資にも多大な影響があった。実は、日本ではあまり知られていないが、アメリカでは1980年代後半にコイン業界に空前のバブルが発生して、1989年にそのバブルが一気に崩壊するという悲惨な出来事が起きた。バブル崩壊後、コインの相場は5年以上低迷したが、相場が上昇トレンドに転じるきっかけとなったのがインターネットの登場である。
2023年に日本で出版されたある書籍には、「コインは過去27年間上昇トレンドが続いている」ことが強調されていたが、その起点になっているのがインターネットの登場でコインの相場が持ち直した1995年である。その後、レアコインの値動きを示す指数(インデックス)は、たしかに緩やかな上昇トレンドを描いている。詳細は省くが、2021年はコロナ禍の影響でコインの価格が急上昇したこともあり、2022年はその反動で若干反落したというのが業界のコンセンサスである。
いずれにしても、1989年のバブル崩壊で低迷を続けていたコイン相場がインターネットのおかげで復活を果たし、その後、順調に成長していることは間違いない。それだけ、アンティークコイン投資とインターネットの相性は抜群ということだろう。
アンティークコインは世界中のオークションで取引されて相場が形成される。インターネットが普及するまでは、コレクターも投資家も、リアルタイムの市場価格を知る手段がなかった。オークション会場に足を運べるディーラーが市場価格で落札して、それをコレクターに転売することで比較的簡単に儲けることができた。今では、オークションの落札価格はガラス張りになり、コレクターや投資家でもインターネットでオークションに参加して「相場」でコインを購入できるようになったのである。
勝機はインターネットの活用にあり
インターネットは、私たちのような投資家やコレクターにとって最大の武器だと思う。インターネットを使えば、海外の造幣局や国立図書館が公開している膨大な資料や文書に簡単にアクセスできる。日本ではなかなか入手できない情報も、現地のコンテンツを検索すれば、コインに関する情報はいくらでも集められる。コインの知識習得において、インターネットほど役に立つものはないと言っても過言ではないだろう。
特に、英語で書かれている資料については簡単に入手できる。古い書籍やオークションカタログなどは、すでに著作権も切れているので、GoogleがスキャンしてPDF化してくれている文献も多い。有名なイギリスの「マードックコレクション」は1902年から1903年にかけて競売にかけられたが、700ページに及ぶオークションカタログをPDF形式で簡単に入手できたのには感動した。
ただし、インターネットに落ちているコンテンツに関しては、中身が怪しいものも少なくないのでファクトチェックが欠かせない。一部のディーラーが発信している情報は、故意に事実が曲げられているものもたまに見かける。彼らが情報発信する目的は、コインを買ってくれる見込み客を集めることなので、そのあたりの意図を汲み取ったうえで、正確な情報だけをピックアップして学習資料に活用すればいいだけの話だ。
インターネットを使いこなせれば、コインに関する情報の入手、オークションのライブ入札、過去のオークション履歴の追跡、eBayなどのプラットフォームで知り合ったコレクターとの交流、匿名コミュニティへの参加など、アンティークコイン投資がどんどん捗ること間違いなしである。
富裕層の人たちは、株式投資ならプライベートバンキングを使って資金の運用をプロのファンドマネージャーに一任するなど、時間の節約を重視する傾向がある。膨大な額をアンティークコインに投資している人も、お気に入りのディーラーにコインの選定から入手まで任せる人がおそらく多いのではないか。小市民が富裕層より恵まれている点があるとしたら、それはインターネットに時間を使えることだろう。インターネットをできるだけ有効に活用していきたいものだ。
コインの価値を高める活用の仕方も
インターネットの基本的な使い方は、アンティークコイン投資に必要な情報や知識を入手すること。インターネットには、投資家やコレクターが情報を発信して、他の投資家やコレクターと直接つながれるという大きなメリットがあることも見逃せない。
アンティークコインの出口戦略、つまり利益をどう確定するかについては、項を改めて詳しく書くつもりだが、投資に適した高額なレアコインを売却する方法としてよく使われるのがオークションへの出品である。これもインターネットの効果として、今では世界の有力オークションハウスの担当者へ直接コンタクトを取って、オークション出品について相談することも簡単にできるようになった。
オークションは一番高い札を入れた人が購入する権利を獲得するというシンプルな売却方法であり、落札価格に応じて買い手と売り手の両方に手数料が課せられる仕組みだ。オークションハウスにとって、できるだけ高値で落札させた方が利益も大きくなるので、高く売却したい出品者と完全に利害が一致している。オークションハウスは、コインが高値で落札されるように、様々なマーケティングを展開してくれる。
オークションは出口戦略には欠かせない存在ではあるが、本当に希少なコインとなると、オークションに出品しても、本来高値で落札する予定だった一人のコレクターが参加しなかっただけで、落札価格は期待を大きく下回ってしまう可能性もある。希少なコインであるほど、オークションでいくらの値が付くのか、事前に予想がつきにくいという大きな弱点を抱えている。
インターネットを活用することで、そのリスクの一部をコレクターサイドでコントロールできるかもしれない。自分のコレクションを公開するウェブサイトを作れば、そのコレクションの存在をできるだけ多くの人に知ってもらうことができる。ネットでコレクションを見て興味を持ったコレクターから購入の打診が来るかもしれないし、将来オークションに出品するとしても、サイトの訪問者に事前にオークション名や開催日を告知することができる。
コインを直接売りに出すのではなく、コインを保有している間にコレクションの価値を少しでも高められる。インターネットにはそういう活用方法もあるのではないだろうか。
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