どんなアンティークコインを投資対象にすべきか

コインの価格には「希少性」が大きく影響する

 どのコインに投資するかを決める前に、コインの価格がどんな要素で決まるのかを理解しておかないといけない。コインの価格は、他の商品と同様に需要と供給のバランスで決まる。需要が供給より多ければ価格が上がるのは当然である。コレクタブル資産の需要には、純粋に所有したいというコレクターの実需と、コレクターの実需が高まりそうなモノを先回りして買うという投資家の仮需があるが、ベースはあくまでもコレクターの実需だ。

 コインの需要を決める要素は、「希少性(レアリティ)」、「状態(グレード)」、「発行国」、「デザイン」の4つだ。一言で表現するなら、「(同じジャンルのコインを集めている)みんなが欲しがる珍しいコイン」の需要が高い。「みんなが欲しがる」、つまり「人気の高さ」をどう見極めるかで投資成績は大きく変わってくる。そのためには、どんなコインを欲しがるかというコレクター心理を理解する必要がある。

 鍵になるのは「希少性」である。自分しか持っていないモノを自慢することは、コレクターの大きな喜びになる。昔ならカルビーの仮面ライダーカード、最近なら遊戯王カード、ポケモンカードなどを集めた経験がある人は、その心理がよく理解できるだろう。

 希少性には複数の要素が重なってくる。基本的には、発行数や現存数が少ないコインは希少性が高くなるが、コインそのものはそれほど珍しくなくても、状態(グレード)が極めていい個体が少ない場合、高グレードの個体は「希少性が高い」と表現することもできる。状態(グレード)という要素は、状態のいい奇麗なコインはコレクターに好まれるという点と、グレードの高い個体は希少だという点で価格に大きく影響してくる。

 近年、デザインのよさで人気が高まり、急に価格が上昇しているコインがいくつかある。ディーラーがセールスに力を入れているコインの中には希少性の魅力に欠けるものも含まれる。人気は将来的にも続くとは限らないので、そのような人気先行のコインを投資対象にするかどうかは、グレード上位のものに絞るなど、希少性という観点を加味して慎重に検討することをおすすめしたい。

 希少性を重視しすぎると大きな落とし穴にハマる。いかに希少なコインであっても、それを欲しいと思うコレクターが少なければ高値はつかない。「みんなが欲しがる」コインかどうかを客観的に判断することが重要である。

基本的には自分が好きなコインを投資対象にする

 アンティークコインには膨大な種類が存在する。すべての国で発行されたコインの合計は、一説には20万種類以上と言われている。もちろん、すべてのコインが値上がりするわけではない。膨大な「銘柄」の中から、将来値上がりする可能性が高いと思うコインを自分で選別しなければならない。

 アンティークコインは、昔に発行されたコインなので、現存数が今後増えることはなく、逆に紛失や溶解などで数は減っていく一方なので、需要と供給のバランスから見ても、値上がりしやすい資産であることは間違いない。そうだとしても、検討に必要な情報の収集や分析の手間・労力を考えると、発行国や年代、図柄(国王の胸像など)などで戦うフィールドを絞り込むのが現実的だろう。

 正直なところ、将来どのコインがどれだけ値上がりするかは誰にもわからないので、基本的には自分が好きなコイン、欲しいコインから候補を選ぶのがいいと思っている。あまりにマイナーな国は、その国のコインのコレクターが少ない=需要があまりないので避けるべきだが、日本ではなじみのない小国や今は存在しない国は、それも一種の希少性として人気化の要因になる可能性はある。

 コインそのものには興味はないけど、投資としては有望だと思うから買っている、という投資家もいるだろう。そういう考え方もアリだし、保有するコインを未練なく売却できるという強みもあるかもしれない。それでも、アンティークコインのようなコレクタブル資産の本質は、保有すること、集めることに喜びを感じる現物資産なので、コレクターの心理を理解するためにも、自分が保有して楽しめるコインを選んだ方が好ましいというのが私の考えである。

 アンティークコイン投資の基本戦術は、バイ・アンド・ホールド、つまり買ってから一定期間保有することになる。アンティークコインは流動性が高くないので、売買する時のスプレッド(購入価格と売却価格の差)が大きくなる。オークションで落札しようが、ディーラーから購入しようが、その時の価格には手数料やマージンが上乗せされている。その手数料分をペイするには、最低でも数年間は寝かせておく必要があるということだ。

 アンティークコインは長期戦になるので、やはり持っていて喜びを感じるコインを買うべきだろう。好きなコインであれば長期保有も苦にならないし、アンティークコイン収集の楽しさも満喫できる。テレビCMではないが、好きなアンティークコインを愛でる時間は「プライスレス」なのだ。

「正しいコイン」を選ぶ、価格は二の次

 アンティークコイン投資で一番難しいのは、「正しいコインを適正価格で買う」ことである。簡単なように聞こえるかもしれないが、それを達成するには、「正しいコインを選ぶ」、「狙ったコインが売りに出ている場所を見つける」、「コインを適正価格で買う」という3つの大きなハードルをクリアしなければならない。特に重要なのは、「正しいコインを選ぶ」ことだ。

 すでに何度か書いたが、「正しいコイン」とは、投資家全員に共通する特定のコインを指しているのではない。この条件をすべて満たしたコインに投資する、というルールであり、その条件は投資家によって一人一人異なる。株式投資でも、私はこの要件を満たす銘柄のみを保有する、という条件で中長期投資している人も少なくないが、それに近いと思ってもらってよい。絶対に守ると心に決めた「自分ルール」のことである。

 アンティークコイン投資は長期保有が基本なので、自分が選んだ「正しいコイン」が本当に正しかったのかどうか、その結果が判明するのはかなり先のことになる。コインを購入した後に方針がブレないように、しっかりと「正しいコイン」を選ばないといけない。

 アンティークコインは、他人にすすめられて買うものではない。何を買うかは自分で調べて自分で決めるのが大前提。「正しいコイン」は各自が自由に決めればいいが、そこには外すことができない大原則がある。需要が大きく価格が上がりやすいのは「みんなが欲しがる珍しいコイン」だということだ。

 いつでも買えるコイン、市場に溢れているコインは「珍しい」とは言えない。あるディーラーは、「ネットで検索して簡単に売ってるサイトが見つかるようなコインはダメ。そのようなコインは希少性がないに等しい」と力説している。これについては、まったくその通りだと思う。入手するのが難しく、どこにも売っていないから高値でも欲しいと思うコレクターがいるのだ。

 別のディーラーは、「投資に適したコインを買え、価格は二の次だ」とも言っている。これもアンティークコイン投資の真実を表現している。「みんなが欲しがる珍しいコイン」は、売っているところを探すのが一苦労だ。売値が自分の想定する適正価格より多少高かったとしても、手元資金が許す限り買った方がいい、という意味である。ディーラーのポジショントークっぽいところもあるが、私はこの言葉をとても気にいっている。

 「正しいコイン」は、なかなか見つけることができず、いざ買うチャンスに恵まれたとして、イメージしていた適正価格よりかなり高いかもしれない。でも、10年後か20年後かわからないが、そのコインを売ることになったとしても、その時の相場より高くても欲しいという人はいるに違いない。そういうコインこそ「正しいコイン」の典型的な例だと思えるのである。

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