発行年・王朝 | 1853年ヴィクトリア女王 | ||
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種類(エッジ) | プルーフフローリン銀貨(ミルド) | ||
グレード | NGC PF63 ULTRA CAMEO | ||
希少度ランク | R2(非常に希少) | ||
入手方法 | 海外オークションで落札 |
グレードは高くないが、唯一のULTRA CAMEO
ゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨は、ESCによると発行された37年間のうち20の年号で発行されたことになっている。しかしながら、市場に出てくるプルーフ貨は非常に少ない。中には鑑定枚数がほとんど記録されていない年号もあり、今でいうPLが過去にプルーフと鑑定されたため、カタログにもプルーフが存在すると認定されたケースも含まれるかもしれない。
その中で1853年銘ゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨は、発行目的がはっきりしている。1853年銘ゴチッククラウン銀貨などと一緒に1853年プルーフセットに収めるために作られた。1853年プルーフセットは、推定で80~100セット発行されたと思われ、1853年銘プルーフゴチックフローリン銀貨は、合計18枚(NGCが13枚、PCGSが5枚)鑑定されている。ゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨の中では、明らかに一番希少性が低い年号である。
ゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨は、ずっとオークションで監視していた。2022年7月、オーストラリアのオークションに裸の1853年銘プルーフフローリン銀貨が出品され、12200豪ドル(BP込)で落札された。輸入消費税を加えると、130万円弱になる計算。鑑定に出してPF64以上が付くなら、いい買い物だったかもしれないが、現物を下見できていない状況で裸を買うのはリスクがあるので、その時は見送った。
鑑定済みの1853年銘プルーフフローリン銀貨が久しぶりにオークションに登場したので、想定した適正価格の2割増の予算で入札に参加し、なんとか落札することができた。正直なところ、グレードの数字「63」はそれほど高くない。この個体の最大の特徴は、「ULTRA CAMEO」が付いていることである。
アンティークコイン投資を始めたばかりの人にULTRA CAMEOのことを説明するのは難しいが、真新しい金型で最初期に作られた美しい出来栄えの個体で、プルーフ貨における最上級品と思えばいい。鑑定会社では、プルーフ貨について、一定の基準を満たした個体についてはCAMEOとULTRA CAMEO(PCGSではDEEP CAMEO)をグレードの数字の後に付けている。当然ながら、CAMEOよりULTRA CAMEOの方が出来栄えはいいし、数も少ない。
このプルーフゴチックフローリン銀貨は、1853年銘で唯一のULTRA CAMEOであるばかりか、NGCではゴチックフローリン銀貨の全年号で唯一のULTRA CAMEOである。PCGSでも、ゴチックフローリン銀貨のULTRA CAMEOは、1887年の1枚のみしかない。鑑定されている全年号のゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨55枚(NGCが33枚、PCGSが22枚)のうち、ULTRA CAMEOが付いているのは、この個体を含めて全部で2枚しか存在しない。
ゴチックフローリン銀貨ではCAMEOも非常に少なく、合計で3枚(NGCが3枚、PCGSが0枚)しかない。しかも、NGCの3枚はすべて1853年銘である。他の年号で一切CAMEOが存在していないということは、前述した「今でいうPLが過去にプルーフと鑑定されたため、カタログにもプルーフが存在すると認定されたケースも含まれるかもしれない」という仮説を支援する材料とも思えてくる。
余談になってしまうが、ウナとライオン5ポンド金貨で有名な1839年プルーフセットに収められていた1839年プルーフハーフクラウン銀貨は、CAMEO率が異様に高い。(1839年当時はフローリン銀貨が存在していなかったので、比較的大きさの近いハーフクラウン銀貨で比較した。)現時点の鑑定数を見ると、NGCで56枚中、CAMEOが23枚、ULTRA CAMEOが1枚、PCGSで41枚中、CAMEOが18枚、DEEP CAMEOが3枚となっている。これについては非常に興味深い考察ができそうなので、後日、単独の記事としてまとめる予定である。
1853年銘プルーフフローリン銀貨の希少度ランクは「R2(非常に稀少)」となっている。同じ1853年プルーフセットに収められていたプルーフハーフクラウン銀貨は、鑑定数25枚で「R3」と評価されていることを考えると、R3でもいいような気がする。1853年は、流通貨のフローリン銀貨が発行されているため、1853年プルーフセット用とは別に、博物館などでの展示目的でプルーフ貨が作られた可能性が考慮されたのかもしれない。
ゴチックフローリン銀貨のプルーフ貨は、1867年銘パターンフローリン銀貨に続いてやっと2枚目であるが、今後は他の年号のプルーフ貨もコレクションに加えられるよう、探していきたいと思う。