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【コレクション】1853年 ヴィクトリア女王 プルーフハーフクラウン銀貨



発行年・王朝 1853年ヴィクトリア女王
種類(エッジ) プルーフハーフクラウン銀貨(ミルド)
グレード NGC PF64
希少度ランク R3(極めて希少)
入手方法 eBayがきっかけで購入

1853年プルーフセットのために作られたハーフクラウン銀貨

 ヴィクトリア女王の即位10周年を記念して発行されたゴチッククラウン銀貨は、一般的には1847年の単年発行とされている。イギリスコインのコレクターなら、ゴチッククラウンに1853年銘のものが少量存在することを知っているだろう。1853年にゴチッククラウンが追加で製造された目的は明確で、1853年プルーフセットに加えるためだった。実はこの1853年のプルーフセット、発行目的や発行セット数など、すべてが謎に包まれている不思議なプルーフセットなのである。

 過去に何度もオークションに出品されているので、プルーフセットの専用ケースや内容はほぼ明らかになっている。下に写真で掲げたようなシールド型の専用ケースに収められ、金貨2種、銀貨10種、銅貨4種の16枚で構成されている。コイン専門家の研究では、長方形のケースに15枚が収められたプルーフセットの存在も確認されているようだ。いずれにしても、非常に謎めいたプルーフセットであることは間違いない。

1853年プルーフセット

 この1853年銘プルーフハーフクラウン銀貨は、その1853年プルーフセットに収められていた1枚である。ヴィクトリア女王の「ヤングヘッド」ハーフクラウン銀貨は、1839年にプルーフ貨が発行されて以来、1887年途中で肖像が「ジュビリーヘッド」に切り替わるまで続いたが、その途中、1851年から1873年までは製造が中断された。1851年から1873年の中断期間に、1853年、1862年、1864年の3回だけプルーフ貨が発行されている。

 まったくの余談になってしまうが、1862年と1864年のプルーフハーフクラウン銀貨も、専門家が「ミステリー」と呼ぶほど謎に満ちている。ヤングヘッドのハーフクラウン銀貨は長期間に渡って発行されたので、肖像面は微妙なデザインの変更が行われ、最近の研究ではA1からA6までの6つのタイプに分類されている。1841年から1850年まではA5タイプで統一され、この1853年銘プルーフハーフクラウン銀貨もA5タイプだが、1862年と1864年のプルーフ貨は、1839年プルーフセットに収められた1839年銘プルーフハーフクラウン銀貨で使われたA1タイプである。1862年と1864年のプルーフ貨もコレクションに加えたいとは思っているが、過去2年間探し続けているのに、オークションでの出品はゼロ。両方とも希少度ランクはR2なので、そろそろ出会えてもいいはずなのだが。

 1853年は流通用のハーフクラウン銀貨は一切製造されていないので、1853年銘のプルーフハーフクラウン銀貨は、1853年プルーフセットのためだけに作られたことがわかる。流通貨が発行された年であれば、博物館などへの販売用にプルーフ貨が製造される可能性があるが、1853年にはその可能性がないため、1853年銘プルーフハーフクラウン銀貨の現存数は、謎とされている1853年プルーフセットの発行数を推測する大きな手掛かりになる。

 1853年銘ハーフクラウン銀貨の希少度ランクはR3(極めて希少)になっているが、実はESCの第5版(1992年発行)ではR2だった。2015年発行の第6版でR3に変更され、2020年発行の最新第7版でもR3を維持している。R2からR3に格上げされた理由は不明だが、編者が意味なく変更するとは思えないので、希少度ランクをR3に変更する何らかの根拠があったのだろう。現時点での鑑定数は25枚(NGCが16枚、PCGSが9枚)である。

 1853年プルーフセットの発行セット数について、あるオークションのカタログでは「30~50セットではないか」と書かれていたが、1853年銘ハーフクラウン銀貨の鑑定数がすでに25枚に達していることから、発行数は80~100セットではないか。400セット前後発行されたとされている1839年プルーフセットに収められていた1839年銘プルーフハーフクラウン銀貨の鑑定数が89枚(NGCが48枚、PCGSが41枚)であることからも、100セット前後という数字が妥当な気がする。

 1853年プルーフセットの発行目的について、いろいろな仮説が浮上しているが、決定的な証拠となる公式の資料がないので結論は出ていない。金貨の最高額面が1ソヴリンであること、少額の銀貨や銅貨が多いこと、エッジがミルドであること、などから、植民地で貨幣を製造する際の見本として配られたものではないかという説が有力だ。ケースにイギリス国旗が印刷されたものがあることも報告されており、植民地向けという説を支援する材料と受け取られている。

 私は以前から1853年プルーフセットには興味があったが、フルセットどころか、銀貨のエースである1853年銘ゴチッククラウン銀貨1枚さえなかなか手を出せない。そんな時に、1853年銘プルーフハーフクラウン銀貨がeBayで売られているのを発見した。顛末を詳しく書くと、とんでもなく長くなってしまうので割愛させていただくが、PF64という平均以上のグレードのものを、納得のいく価格で購入することができた。

 スラブに「Alan Perkins Collection」と記載されているが、これは「ペディグリー(血統書)」と呼ばれるもので、鑑定に出す際にオプションサービスとして誰でも申し込める。Alanは、ハーフクラウン銀貨の現役コレクターとしては、ディーラーの間ではそこそこ知られた人らしい。従来は裸の状態でコレクションを保持していたが、思うところあってコレクションをまとめて鑑定に出した際に、ラベルに自分の名前を冠したコレクション名を付けたのだという。

 ペディグリーには、基本的に誰でも自分の名前を冠したコレクション名を付けることができるが、有名人や広く知られたコレクション名(マードックコレクションなど)を付ける際には、来歴を証明する書類の提出が求められる。NGCやPCGSはコインそのものが真正品である保証はしてくれるものの、ペディグリーとして記載した来歴が事実であるかどうかの保証まではしていない。

 購入した鑑定済コインに他人の名前がペディグリーとして印刷されているのは気に入らん、という人は、鑑定会社にリホルダーというサービスを依頼すれば、グレードなどの鑑定結果はそのままで、ペディグリーを外したり、自分の名前を冠したコレクション名に書き換えたりしてくれる。長期間売るつもりがない人は、コレクションがある程度構築された段階で、すべて自分の名前を冠したペディグリーに差し替えておくのもいいかもしれない。

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