発行年・王朝 | 1860年ヴィクトリア女王 | ||
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種類(エッジ) | フローリン銀貨(ミルド) | ||
グレード | NGC MS62 | ||
希少度ランク | R(希少) | ||
入手方法 | 裸を海外ディーラーから購入 |
非常に見た目が美しい個体
裸のゴチックフローリン銀貨を購入するのは、主にイギリスのディーラーから。裸コインにはディーラーが独自にUNC(未使用)やEF(極美品)などのグレーディングを付けているが、その基準はディーラーによってまちまち。主観的なグレーディングになるので、NGCやPCGSに鑑定に出すと、鑑定結果は予想外になってしまうことの方が多い。
未使用状態のものは、一般的にUncirculated(UNC)と評価される。UNCの裸コインなら、鑑定に出すとMS62くらいは付くだろうという期待があるが、これが一筋縄ではいかない。予想外にMS64が付くことも稀にあるが、洗浄痕あり(Cleaned)としてDetails評価になることもある。もちろん、写真をよく見て、洗浄痕がないと思われる個体だけを選ぶのだが、写真だけではわからないことも多い。
Cleanedの場合でも、AUかUNCの区別はされる。UNCと記載された場合、洗浄痕がなければMSだったということになる。表面(国王の肖像面)だけ洗浄されているケースも多く、その場合はラベルにも「表面だけ洗浄」と明記される。ただし、数字が付かなければ、「片面洗浄」でも「両面洗浄」でも、市場価値はほとんど差がないのが実情だ。
裸コインを選別する際は、まずはディーラーがUNCと評価していることが最低条件になるが、ディーラーによっては、UNCより上位のグレードとして、Brilliant Uncirculated(BU)、Choice uncirculated、Fleur de Coin(FDC)などを設定していることもある。FDCは、主にプルーフ貨の最上級を示すグレード。Fleurは、花を意味するフランス語だが、最上級の状態を示す用語として定着しているのは面白い。これらの他にも、As Struck(製造時のまま)という表現を使うディーラーもいる。
Brilliant Uncirculated(BU)は、文字通り「輝いている未使用品」という意味で、見栄えを重視するイギリスらしいグレードだ。(アメリカでは、特別仕上げを施されたモダンコインの種類としてBUが使われることがある。)未使用品の中でも、特に光沢がある奇麗な個体にBUが付けられるが、見栄えをよくするために洗浄したコインも混じっている可能性がある点には注意が必要だ。
写真では非常に奇麗な個体を販売していたディーラーに、「写真を見る限り、洗浄しているように思うが?」と質問したところ、「50年以上前の古いコインでは、BUは洗浄されているのが普通」と人を食ったような回答が返ってきたことがあった。当然、そのコインの購入は見送ったのだが、ある意味、誠実なディーラーと言えるかもしれない。
この1860年ゴチックフローリン銀貨は、別のディーラーで「BU」として売りに出されていたもの。金色のトーンが素晴らしかったので購入した。現物が届いて実際に手に取ってみても、やはり美しい。これならMS64以上は間違いなし、とワクワクして鑑定に出したのだが、結果はMS62だった。イギリスのディーラーが重視する見栄えは、アメリカの鑑定会社のグレーディングでは、さほど加点の対象にならないようだ。
1860年ゴチックフローリン銀貨の発行数は約63万6000枚、希少度ランクは「R」である。鑑定数は、合計25枚(NGCが16枚、PCGSが9枚)となっている。MS62というグレードはさほど高い方ではないが、スラブに入ったままでも金色のトーンは目を楽しませてくれる。こういうコインは裸のままで持っていたい、というコレクターの気持ちもわかるような気がする。
実は、1860年ゴチックフローリン銀貨は、もう一枚持っている。これも裸で購入して鑑定に出したのだが、結果は同じMS62。そちらの個体もかなり奇麗で、MS63は付いて欲しかったのだが、鑑定結果は期待通りにはならないものだ。